『てとてトライオン!』プレイ日記 その4

 会長ルートクリア。といっても、前回中断地点直後に終了でありました。
 もうひとヤマ来るかと思っていたんですが、残念(´・ω・`)

 まー、ダラダラ続けることもなく、小粒ではありましたが十分に面白かったです。

 ただ、会長について語るべきことは、もう前回でほとんど書き終えてしまったのが難点かな。

 edファイルの数からして、グランドエンディングは「5つ目のエンディング」ではなく夏海ルート、なのかな。

 ともあれ、次はてまールートへ進みました。

 思いっ切り好意全開で、女性の狡さを以て挑んでくる彼女。
 ここで慎一郎は隠し持っていたヘタレ回路を起動して鈍感男になるんですが、突っつかれているうちに……という流れ。

 悪い、とまでは言わないけれど。てまーみたいなキャラは駆け引きがあってこそ、なのに勿体ないとだけ。

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 以下ネタバレ混じり注意!

 まず会長ルート。

 ふたりともが生きることに積極的で、もちろん恋にも旺盛な好奇心を発揮。
 エッチシーンの使い方がうまいな、と思えましたね。

 受け継がれたのは、肩書だけではなくて。何よりは「学園を好きだ」という気持ち。

 「慎一郎は感化され易い子だのー、心配だなー」というのは、半ば杞憂。彼に会長職を継がせるために、一乃の考え方を自分の中に受け容れ、消化させ、血肉に変えさせる必要があった。

 これにはボリュームが若干少なめだったのが難で、どうしても違和感が出てしまうのが残念。

 慎一郎が会長に惚れる、彼女を受け容れる、という描写は凄くよかったんですが、“彼自身”が希薄になってしまった。

 一乃になく、慎一郎にあるもの。それは、生への強い渇望。ハングリー精神と言い換えてもいい。

 ハリケーンブラック到来時に一乃が書いた「こんながっこうだいきらいだ」の気持ちを、たぶん慎一郎は汲み取れていないんじゃないかな。

 ただ、深い絶望があったのだろうな、という想像があるだけ。

 けれど、おそらく彼女の胸にあったのは強い倦怠感。そして、責任転嫁。
 全力を出し切っていなかった、形振り構わずみんなに協力を請わなかった、自分に目を逸らしていた。逸らしていたのが分かっているからこその自己嫌悪も、あったことでしょう。

 生きる糧を、自分の手で得られなくとも、生きていけるのが、それが出来てしまうのが現代っ子。自分の手で得ようとして、失敗して、けれども、「自分が得ようとしたものと同等以上のモノ」が与えられてしまうことだってある。

 一乃だってそんな倦怠感を、抱えていた。

 その倦怠感を打ち倒すドラマとは、獲得”のお話で。

 彼女が正しく自己嫌悪を行ったとき、溢れ出てきた悔しさ。

 この学園は与えられた楽園で、それを享受することで満足していた自分自身の情けなさを自覚した。自分たちの手で、楽園にすればいいのに、と気づいた。

 これはつまりアイデンティティの確立だったんでしょう。

 これこそ本筋にして欲しいくらいではありますが、過去回想だけ長くとも、と思いますしこの際置いておきます。

 慎一郎は一乃とは違う。生きる糧を自分の手で得られなければ、生死に係わる生活を送ってきていた。だから、「諦める」ということを知らないし、「自分が努力せずとも与えられる」ということも知らない。

 だから、失敗して挫折するということを、彼は理解できない。最善は無理なら次善を選び、失敗から学ぼうとする。そうしなければ、そもそも生きていけない世界にいたから。

 この輝きを、一乃は慎一郎に見て欲しかったな。

 一乃が苦労して獲得したものは生来の気質ではなく、だからこそ魅力的なんですよ。だらける彼女、そんな自分を叱咤し凛としようとする彼女。この二面性とも言えない、人間臭さ。

 これを、直せとは言わない。だらけたり、遊んだり、調子に乗ったり。そんな人間性を捨てろとは、言わない。

 けれど、“手と手を繋ぐ”のであれば、慎一郎のことを、しっかり見て欲しかった。

 これは獅子ヶ埼祭準備の指揮だけでしか、これが表せていなかったように思う。
 あまりにもあっさりしていたのと相俟って、落胆が少し大きかったかな。

 ただ制作側の「やりたいこと」「伝えたいこと」はしっかり見えましたし、「女の子に合わせる男の子」だってそうマズイわけではない。「男の子に合わせる女の子」の図を見せられるより、ずっとマシ(同じ問題(男の子)に違う解答(女の子)を出すところに面白みがあるわけで、その女の子らしさを失わせる展開は全体としての面白さを減じさせてしまう)

 僕は特別に「対等な関係」が好きなクチでして、たとえばエッチシーンや二人の日常会話のやり取りでは主導権争いが普通に行われていたのもよかった。ああいう駆け引きは、大好きです。

 好意的に解釈すれば、もともと二人は似た者同士だったとも考えられる。根は無頼の人であったといいますか、責任感が強いだけに、そして能力が高いだけに誰にも頼れないところがあった。
 一乃はこの孤独を既に乗り越えていて、彼女に手を引かれて慎一郎も……というドラマも見られました。

 全体を見渡せば十分に楽しく遊べていましたし、結局は食い足りなくてぶちぶち言っているだけ。
 それだけ魅力的だったんですよ!

 というわけで、会長ルートのお話はこれにて終了。てまールートのことも書かないとねっ。

 てまールートは夏海の誕生日会直後まで進めました。

 たぶん、会長ルートとは担当ライターさんが違っているんでしょう。受け身気味の慎一郎を見ているのは若干しんどかったです。

 また、手鞠のキャラクターが少し不思議な感じ。「気になる異性」に対してあれだけ積極的に振舞えるのに、「てまーボイスを受け取れるのは極少数の人間のみ」という設定を見ると人間の好みが狭いのかな、という気がして妙な違和感が。

 彼女のようなキャラクターならもっと交友範囲が広くてもよいはず。もっと言えば恋多き女性でもいい。

 「生徒会業務が忙しくて誰も寄り付けない」とか「鷹子の守りが鉄壁過ぎる」とか想像も出来るんですが、だとしてもせめてもうちょい女子の友達はいてもいいはず。

 ……ただ、この違和感を彼女だけにぶつけるのは酷かな。そもそも、「手と手を繋ぐ」を謳った作品であるのに、獅子ヶ埼トライオン!自体、学園の生徒会自体、他の生徒との協調に乏しい。

 獅子ヶ埼トライオンの手の他に実動は学警だけ。餅は餅屋と言われればそれまでなんですが、「自分たち(生徒たち)の手で学園を運営する」という話なのに、そもそも主語にある「自分たち(生徒たち)」の顔が、あんまり見えて来ない。

 会長ルートは、過去回想からの「手と手を取り合った」という流れがあるのでまだいいんですが。うーむ。

 まー、ここは素直にラブコメとして受け取っておくべきなのかな(´・ω・`)