紅 第3話「偽物の顔」の感想文です

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■紅真九郎(C.V.沢城みゆき
 彼が何で銀子とラーメン屋をやっていないのかというと、あのわしゃわしゃ動く腕が関係しているのかな?まさか本当に荒事の世界で生きた方が自分には合っている、その方が気楽だなんて考えているわけではないでしょうし。
 あるいはどうやら恩人らしい「紅香さんの役に立ちたい」とかでしたら、結構簡単に足を洗えそうなんですけどね。紅香さんは真九郎の自立を促そうとしているようですし。

 真九郎が誰を想っているのか、ということが僕にはまだちょっと掴めてはいません。友人にひやかされるまでもなく、彼は二人の少女が自分に持っている好意に気付いているように見える。どちらにも近付き過ぎず、かと言って離れ過ぎずの一番狡い距離感を維持しようと努めているんじゃないかな。
 ただ、銀子からの気持ちには敢えて避けている節があって、逆に夕乃さんへはむしろ自分の方から近付こうとしているような感じ。それは単に夕乃さんの方が駆け引き上手であるためなのか、あるいは別の理由があるのか。今の段階でも憶測は幾らでも言えそうですが、はてさて。

 さて、今回は紫の言葉が彼を責めることに。電車での一件、どちらが正しかったのか。仮に紫が正しいとする。しかし、どうでしょうか。真九郎の予想ではそれでは暴力沙汰になってしまうわけで、僕もそうなるだろうと思います。紫の言い分が正しくて、それをそのまま行ってしまうと結局は暴力を行使することになりますね。それでは相手を殴り倒して言うことを聞かせる、となってしまう。あの紫の態度が、言葉が正しいのではなく、力が強い方が正しい、としてしまうことになってしまう。それでは根本的な解決にならず、彼らはまた弱者を見ればいたぶることでしょう。しかもそれは、今回よりももっと悪質なものになってしまう可能性もある(八当たり的な意味で)
 紫の言い分は正しい。ではあるんですけども、正しさを示す力が弱いかな。その後ろ盾に真九郎の持つ“暴力”を置こうと一瞬でも考えてしまったのであれば、それは間違いでしょう。示威行為をしつつ「俺は正しくないけど言うことを聞け」と「俺が正しいのだから言うことを聞け」では人の道に悖るのは後者でしょう。ま、とはいっても僕があの場での正解を見い出せるわけでもなく、本当のところは「志を高く持つことはいいことだ」としか言えないんですけどね。真九郎のやり方も間違いかというと、そうではないことを忘れてもいけませんが。

 いやーもう本当に厄介事ばかり背負いこんでいますね。彼なりにひとつひとつ対処してはいますが、いつかと言わず近い将来に彼の器を越えて溢れ出してしまうんじゃなかろうか。その危機に対応するのが、この物語とも言えそうではありますが。

■九鳳院紫(C.V.悠木碧
 まっすぐだなぁ。彼女の真っ直ぐさがどこから来ているのかというと、それは幸せを想う心が源にある。彼女はどんな境遇に置かれても自分という芯を保って、思うがままに笑い、悲しみ、怒り、自然に生きていきたいという願いがあるように、僕には見える。

 どうしてそんなことを考えてしまうのかというと、母のような人物にはなるまいとの恐怖があるから。母が“可哀想”な女性のままその生涯を終えてしまったから。すると彼女はお母さんのことが嫌いなのかな、というとそうではないように感じる。ドロドロと愛憎入り混じった感情を抱いているわけでもなく、憐れみと悲しみがある。どこか乾いた愛情、とでもいいましょうか。
 これは恐らく彼女の持つ無力感に裏打ちされているとも言っても過言ではなく、それに打ちひしがれることへ必死に抵抗しているのが、現在の彼女。

 きっと、真九郎は紫の助けとなることでしょう。それは間違いのないこと。ただ、僕が願うのは彼女が彼女自身の手によって救われること。母の愛を、父の愛を受け容れ、自分なりの手段で世の不条理と戦えるようになって欲しい。間違いを糺すのではなく、ただ出来ることをやれるように。

■村上銀子(C.V.升望
 彼女と真九郎の関係というのは幼馴染だけで済ませるには近過ぎるんですよね。本当に微妙な距離感を維持している。たとえば彼女が拗ねて見せれば真九郎はフォローに回るわけですが、これ自体はまあ普通の友人間でもないことではない。ただ二人の場合、その際に使われる言葉や気の遣い方が明らかに番いのソレ。
 でも相手が近付こうとするとどこかで防御して、かと思うと離れそうになる相手を繋ぎ止めて。こ、この雰囲気!この空気感!!超絶に全然まったくこれっぽっちも嫌いではない僕ではあるんですが、しかし不安もある。

 僕は真九郎が自惚れてもいいと思うんですね。銀子が情報屋業を始めた理由が「真九郎のサポートをするため」と、彼が自惚れてしまってもいいと思う。しかし、そうすると彼は銀子の好意を認めなければならず、となれば何らかの答えを出さなければならない。それがまったく勘違いだとしても、そんなのは同じ。人の想いは一方通行で、それをなんとか交わらせようと努力するのが恋愛なんですし。
 しかし、あのとき二人は軽く流した。

 なんちゅーか、「気恥ずかしくてorこれまでの関係性が“変わって”しまうのが怖くて踏み出せない」ではなく、決して結ばれないことを意識しているようにも思える。真九郎が銀子を選べない理由でもあるのかしらーとか思うと、やっぱり彼の“腕”が気に掛かるわけで。むーん。

 「そもそも銀子は別に好意を抱いてないんでないのー?」と見る方もいるでしょうが、それじゃあ夕乃さんと真九郎の話から「子供のころに二人でラーメン屋さんを継ぐって話してくれたのになー」まで繋げる銀子は天然悪女ということになってしまいますwそれはそれでありかなと思いますが、これが彼女の精一杯の駆け引きだと思った方が楽しいよ!

■崩月夕乃(C.V.新谷良子
 うおお、黒いなぁ。僕は特に嫌いじゃないタイプなんですが、しかして彼女が真九郎に抱いている感情がどのようなものであるかというと、少し悩む。
 粘着質な、“家”に根付いた感情があるように思えてしょうがない。真九郎の何が好き、とかではくてさ、幾つかの夕乃さん審査を通ってしまっただけなんじゃないのかなぁ。

 しかし、まあ、彼女の持っている「やーらしい」雰囲気はある種の色気がありますよね。特に肌を見せたりパンチラがあったりとかいうそういう分かり易いエロスではなく、言葉の端々や態度に宿る女性の色。これが強烈でして、武器に扱えるなんてそりゃ難物ですよ。

 崩月家はよく分からない武術を継ぐ家系らしく、九鳳院とも関わりがあるっぽい?御庭番的なソレ?

■柔沢紅香(C.V.石毛佐和
 弥生さんから紫が真九郎の仕事に着いていこうとしていると訊いて「どいつもこいつもガキなんだから」とコートを取って、でもやっぱり収めた。
 「ガキ」の対象には紫が心配で仕方ない弥生さんとか、子供一人寝かし付けて仕事へ行けない真九郎とか、まあ後は紫も入っていたのかも分かりません。

 そんな彼らには庇護が必要だろうと彼女は自ら赴こうとしたけれど、取り止めた。自分が何でもかんでもこなしては彼らの成長の機会を奪ってしまう可能性もありますし、何よりそれを行っては自分が彼ら信頼していないという証左になってしまうから。
 始めに弥生が「この仕事は彼には重過ぎる。無理では?」と進言し、それを無視して押し通した際に彼女が言ったのは「私の直感が信用出来ない?」であり、弥生さんはひとまずそれを信じたわけですね。その信頼に応えるには、自分も自分自身の判断に信を置くしかない。

 指導者の難しさ、でしょうかね。まあこの気持ちは指導者というか、親心と言った方が正しいような気もしますが。

■犬塚弥生(C.V.大久保藍子
 あーはいはい萌えキャラ萌えキャラ。突発的なアクシデント、つまり想定外のトラブルが起きると直ぐオロオロしちゃうのな!!柔軟性に欠けるのはときに美点となり、基本的には正直で誠実な人柄とも言えるんでしょう。ま、それで“侍”は出来ても“忍者”が出来るんかいなとか思っちゃいますけどね!!

 そんなわけで可愛い女性でした。実はもっともあざとく萌えが強調されているのは彼女だったりしてっ。

■感想
 今回は青少年の苦悩が前面に出ていて、実に僕好みの回でした。
 真九郎に依頼されたのは「紫の護衛」だけであって、別に子守りとか子育てとかは仕事の範疇ではないんですよ。ただのガードマンが「人から親切を受けたらお礼を言いなさい」と教えてはくれない。
 それが彼の言う「大人が子供に親切をするのは当然のこと(≒年長者が年少者に親切をするのは当然のこと)」に当て嵌まるのであって、紫への好意は含まれていないのかもしれません。ただ、その行為は大人は子供に未来を懸けている、託しているという意味のものでして、そういった意味で紫はきちんと愛されている。大人が子供に親切にするのは、大人が子供を大切に扱い、愛するのは当然のことなのだから。

「そんなのよく考えれば分かるのだー、紫のおバカさんめ」という風にはいかないのは、悲しいこと。彼女がそのように考えられないのは、今まで愛情を実感して来なかったから。
 そんな不幸を真九郎が吹き飛ばしてくれるといいねぇ。や、実におもろいアニメです。叶うのであれば銀子と真九郎で紫の子育てって方向になりますように!!!(たぶんならない