紅 第4話「才物」の感想文です

 深夜、紫が寝静まったころ。真九郎は銀子の依頼を果たすため、とある事務所へ向う。
 しかし、紫は部屋を出る彼に気付いていて………。



 というのが、今回のあらすじ。うち的に速度は捨てたので、ひとつひとつゆっくり更新していこうと思います。


紅 kure-nai - livedoor Blog 共通テーマ


■紅真九郎(C.V.沢城みゆき
 な、何かよく分かんないものが肘の先からにょっきり生えてたよ?! く、草薙さん!?とすると紫は紅葉か!(違

 彼の行動がどこで間違っていたのかなというと、幾つかあるように思える。まあ交渉はあの流れでもしょうがないでしょう。相手に嘘を吐かれたとして確認する術はなく、銀子の前で言ったように様子見するしかない。うちに手を出さない代わりにこれを差し上げますから勘弁してくださいよーとか、幼稚園に付きっきりでずっと張り込むとか、ええい面倒だワルモノなんだから皆殺しにしちゃえーとか、どれも出来ることではない。すると、あの流れ自体は必定。
 紫が現れた時点で交渉を切り上げようとしなかったところとか、突然殴り掛かられて先手を取られたのは仕方ないとしても夕乃さんが言ったように不覚を取り、尋常の技では切り抜けられなかったところとか……他にも僕が気付いていない理由も含めてちょいちょいあるんでしょう。ただ、何よりの間違いは彼が学生と二足の草鞋で揉め事処理屋を続けていることなんでしょうね。昼間か夜間の片方では紫を構ってあげて、もう片方を別の仕事へ充てればいい。たぶん、そうするのが“揉め事処理屋としての正解”なんでしょう。
 けれど、それは決して16、7の男の子としての正解ではないでしょうし、そしておそらくは普通の正解を選べない、あるいは選ばなかった真九郎にとっての正解でもないんでしょう。

 彼がやりたいことというのは、僕にはまだ掴めていない。ついでに言えば、作中でもまだ描かれていないんじゃないかと思います。だからまあ、ここで書くことはなんでもないたわ言として受け取ってもらって結構ですよー、と予め予防線。

 彼が揉め事処理屋を志した理由はなんだろなって考えると、これは本人の申告通り「紅香に憧れた」というのもまああるでしょう。では、何故憧れたのか。

 今回、真九郎の前で女の子が殴られるシーンが二回出てきましたね。事務所から出る際に紫が、過去回想の中で銀子が。銀子のときは「偽物の顔」をしていた彼が、紫のときは角を出してお冠。となると、真九郎が力を欲しがるのはあのときの銀子を本当は自分の手で助けたかったから、とも受け取れやったー銀子派の俺勝利!!はするんですが、おそらくそうではない。というか、それだけではない。
 彼はたぶん、失ったものを取り戻したいのだと思いますね。それを本人が自覚しているのかどうかは、別としても。

 彼の中で「死ぬのが怖くなくなっちゃったんだよな」がまだまだ消えておらず、実際自分の痛みに鈍感。その理由を考えると、死が彼の中では曖昧なんじゃないかなー、実感が湧かないんじゃないかなーっと僕には見えているんですね。それは裏返って“生”の実感が乏しいんじゃないかな、そしてそれは彼が時折見る悪夢から来ているんじゃないかな。家族の死体を目の前で見た瞬間から、彼の中で生きている現実感が乏しくなったままなんじゃないかな、僕はそう思いますね。
 でも、それではいけないと心のどこかでは分かっているんじゃないかなと。荒事の場に身を置くことと学校生活を送ることを同時に実行しているのは、ただただ生きている実感が欲しくて……という気持ちがありそうではありますね(学校の方は周りに強く勧められて、というのがありそうだなーとも思いますが)。彼は今、子供と大人というだけでなく、生と死の境界にも身を置いていますが、輝く生の象徴たる紫との関わり合いによってまた変わって来て欲しいなぁ、そう切実に願います。

■九鳳院紫(C.V.悠木碧
 紫の行動を見ていると、辛いものがありますね。おそらく彼女の中で、暴力に曝される自分の保護者というものはどうしても自分の母親に重なることでしょう。だから、母親のときには出来なかったことを、真九郎にはしてあげた。

 大切な人を誰憚ることなく労わることさえ許されてこなかったのが彼女であるわけなんですよ。それを自由にしてよい、ということにあるいは彼女はようやく生きている実感とか、喜びを胸に受けているのかもしれません。彼女が真九郎に心を砕くさまは、本当に拙く、幼いものでありました。でも、だからこそ心の温まる、尊いこと。

 いやー、実によかった。前回見せた彼女の行動から考えるに、本当は真九郎が行っていることを質したいだろうし、自身に非なんてあるはずがないと思っているはず。でも、それを圧してでもやるべきことは真九郎を優しく労わることであったことが、彼女の何より素敵なところですね!

#彼女は自分が物を知らないお子様であることを自覚しているので、実際はそこまで極端な考えではなかったことでしょうし、少なくとも「真九郎があの場に紫を連れてい適ったことにはきちんと理由があり、それ自体は誤りではなかった」ことは納得していたような気もしますけどね(´・ω・`)

 嘘を吐く者は戸籍上の母親に重なるんでないかなー、と思いますがううむ。とすると、彼女は「嘘を糾弾されたものがどのような行動を出るか」に想像が及んでいた可能性があり、だからこそ彼女は自分自身を責めたのかなー、とも思えますね。まあでも、何でも素直に、正直に生きることで時には誰かに(間が悪ければ大切な人に)迷惑を掛けることを彼女が分かったということで、「偽物の顔」での真九郎の言葉を理解した、ということでいいのかな。

■村上銀子(C.V.升望
 えーと、うん。真九郎は銀子以外選んじゃダメだと思う。んで、もちっと彼女を大切に扱ってあげるべきだと思う。

 過去回想の彼女を見て、僕はそう強く感じたな。誰かさんと違い、彼女は死が怖くないわけがなくて、でも全ての損得勘定を抜きにして真九郎が一番大事であったということなのでしょう、うん。

 彼女なら「わたしたちやっとお互い素直になれるようになったの」とか紫に言い出しても怒らないよ!(言わないと思うけど)「プロポーズみたい…まだOKもしてないのに……」とか言っちゃっても怒らないんだからねっ!!

■崩月夕乃(C.V.新谷良子
 怒ってる夕乃さんは怖いなぁ。彼女自身が、自分と真九郎をきちんと切り離して考えられている。だからこそ伝わってくる断絶と、思いやり。
 この態度というのは、普段真九郎に接している態度とは矛盾していて(好き好きアピールのことではなく、甘えきってまるで真九郎に依存しているかのような態度のことな!)、やはりあれは仮面を被っているだけで、ある種のお芝居の様なものだったのかー、という気持ちがひしひしと。

 ま、次回のお話はそのように振舞っている彼女を愛おしく感じられる回であるわけで、詳しくはあちらで触れますか。

■柔沢紅香(C.V.石毛佐和
 彼女の格好よさは、いつかした雑談の中でぽっと出て来た約束をきちんと果たそうとしているところであり、それはつまり責任感の強さなのかなーと思ったり。
 仕事に誇りを持っている、というのもちろんありますけどね。

■犬塚弥生(C.V.大久保藍子
 僕が見えて来ないなーと思うのは、彼女自身が紫に傾けている感情のことなんですね。
 何かと可愛がられている真九郎への嫉妬というのは、そりゃあるでしょう。でも、僕にはそれだけでは済まされない苛烈さがあるように見えているんですね。それって単に紅香のことを想って、政財界に顔の利くらしい九鳳院相手の仕事で「柔沢紅香が失敗すること」を恐れてのものなのかなー。

 うーん、そこに紫への強い感情なんてないとなると悲しい。僕は在って欲しいと思っている。それぐらいには弥生さんが好きです。ただ、どうやら無いっぽいのが辛いね。

■ヤクザ屋さん
 前回だか前々回だかで僕は「揉め事処理屋とヤクザ屋さんってどう違うの?」と書いたんですが、彼らの登場とその立ち居振る舞いで答えが見えましたね。
 それは誇りであり、職業意識からくる高潔さ。少なくとも、紅香傘下の揉め事処理屋にはそれがあるんでしょう。

■感想
 というわけで、今回は真九郎の弱さと紫の持つ寂しさ、そして強さが垣間見えた回でありました。……って、紅って毎度そのパターンのような。

 いやいや!!まあ、それはそれとして今回もまた面白かったなー。

 真九郎の中で子供(紫)を助けることはあの日の銀子だけでなく、自分自身を救うことに繋がる。や、意義深い回でありました。彼の項目を読んで「え、真九郎とそこまで酷い状況じゃなくね?」と思われた方もいるでしょうが、それはたぶん崩月家で育てられた影響でして、その辺については次回の感想で触れようと思います。