黒執事 第4話「その執事、酔狂」雑感

 ロンドン(っぽいところ)を騒がす連続娼婦殺害事件。女王の番犬たるファントムハイブ家は警視庁に先駆けて独自の調査を始める……。

 というのが今回のあらすじ。
 梗概だけを見ればとてもギャグアニメとは思えませんが、今回もまたノリが女性向け仮面のメイドガイなのはブレていませんでした。

 シエルに女装させた上で男を誘わせ、婚約者の前で羞恥プレイ。そして、闇の奴隷市で売られてしまったり、あるいはその前段階では執事に色々と仕込まれたり。

 倒錯した少年嗜好が垣間見えます。

 このように、あえて性的には宙ぶらりんに描写されるシエルの婚約者は外面・内面ともに「少女らしさ」で塗り固められたエリザベスだったりするのですが、ではもうひとりのパートナーたるセバスチャンはどうなのかというと、冷血美青年ではありますが、彼はシエルに仕える執事なんですね。

 少女性を束縛された自由とかに置き換えると、男性性は支配する側なのだろうなー、とかってのが定石ですが、セバスチャンはシエルを組み敷いているわけでもなく。

 本当は“男性”の象徴として、一族の長老みたいなのがシエルを性的な意味で虐待したりして、バランスを取っていそうなんですけどね。

 “契約”というルール破りを使っているので、逆にシエルの方が“男性性”の手綱を握っている。けれど、ルール破りであるだけに、いつ崩れてしまうともしれない危うさも孕んでいて。

 とかなんとかいえば、至極まっとうなゴスロリアニメなんですが、本作はギャグアニメです。

 定石に、ベタに一捻りを入れてギャグにしちゃっているんですよね。「あくまで執事ダブルミーニングというより駄洒落)」「セバスチャン(雰囲気作りのために中二病にも通じる格調が求められるところで「執事といえばセバスチャンだよね!」という安直なネーミング)」「万能っぷりを“人の分を超えた得体の知れなさ”ではなく“凄過ぎて思わず笑っちゃうよね!”と見せる演出」とかとか。

 今回で言えば、マジックショーの折りに悪魔的な秘術を使わずに素で剣を避けたり、ときたま刺さってみたり(そしてそれを「痛かった」などと告白させてみたり)、さりげなく劉も達人技を披露させてみたり。

 その癖、「どこからそんなロッカールームを出したんだ」「どこからあれだけの剣を出現させたんだ」というツッコミどころも用意していて。

 笑わせる気満々です。

 同時に、基本骨子は王道路線なのでお話としての筋はそれなりに丁寧。

 読み解かせるためではなく、ただ不安を煽るだけの“謎”も用意されてしっかり“引き”もありますし、やまなしおちなしいみなし、ではない。

 ピエロって張りついた笑顔が不気味なんですよね。
 
 “記号化された滑稽”で、中身が、その本来の表情が、真実が隠されてしまっている。だから、ピエロの見せる技巧の素晴らしさ、滑稽に見えるよう計算された所作に、得体の知れない恐ろしさを感じてしまうことがある。

 本作は要所要所で“笑い”と“恐怖”を入れ替えてくるのが面白いです。「なーんだギャグアニメじゃん」で済ませようとすれば、ギャグの文法ではなかったり、「お、真面目に行くのか」と思うとギャグで来たり。

 このノリが最後まで続くといいなぁ。振り子がゆらゆら揺れているのがいいのであって、どちらかに偏ると凡作になってしまう恐れも。