とらドラ! 第10話「花火」の感想文です

 前回に引き続いての旅行回。
 原作を読んでいたときに僕もグッと引き込まれたエピソードであります。

 徐々に育んでいく関係性(変化し続けるということ)、素直な意味での“恋の駆け引き”、裏にある真っ直ぐな想い。

 とても真摯に“恋愛”を描く本作の姿勢が、しっかり表されたのではないかなと思いますね。

……文化祭エピソードで終わっていてもよいけれど、その方が受け手的には気持ちよく終わるのですけれど、そこで終わらないのが本作、なんですよね。

 以下、割りと原作ネタバレ感想。別にあらすじとかが書いているわけではないので、そっちを期待されている方は注意。
高須竜児
 この時点ぐらいまでの彼を僕は特に責めることも出来ないんですよねぇ。

 亜美に対しては別に気を持たせ過ぎるでもなく、大河に対しても突っ込み過ぎだとも今更言えないですし、みのりんに対しても誠実にアクションを起こし、リアクションのひとつひとつを吟味していて。

 僕はこの辺の竜児が好きで、だからこそ彼に期待しているんですよ。

 ただ、そうね。次回は文化祭エピソードか。分岐点はあそこだったかな、という気持ちが強く。

 あそこで終わらないのが本作、ということは強い意味を持っていると思いますね。

 思い返してみると、彼が常に対等であろうとしたのは亜美だけであって、それは結構不幸なことかな。

逢坂大河
 ふたりの関係に持ち込まれた性意識を、無視しないでいるとこうなっちゃう、ということかな。
 竜児は目を背けたままで、彼女は前回・今回でしっかり見据えた上で否定の立場を取ったけれど、実際にみのりんと仲よさげにしている竜児を見てしまうと、彼に対する明確な「離れ難さ」を強く意識してしまうようになっていた、ということなんかなっと。

 恐怖には立ち向かっていくのが彼女だから、逃げることを知らないから、近付いて来た男がそれほど悪くない奴で、そんな男に近付き続けられると、こうなっちゃうのも仕方ないかな、という気も。

櫛枝実乃梨
 なんか色々盛り上がっているようで。

 僕はえみりおんさんが慧眼かなとも思うのですが、人工衛星とUFOにどんな意味があったのかな、とも考えちゃうのですよ。

 幽霊は見える人にしか見えないもの。とりあえず、「存在はしている」ということにする。UFOは未確認飛行物体なわけで、要は「存在していないかもしれない」のだと、僕は見る。

 これは確かに、“夢”に喩えるのが正解なのかな、とも思います。未確認を確認したい、夢を叶えたい。後々の展開も含めると、お、これはなかなか鋭いぞ、と。

 ただ、幽霊とUFOのどちらも同じ比喩だったとすると、「見間違えとか一瞬のときめき(今回見た“幽霊”)とかじゃなくて本当の恋がしたい」とも考えられて、僕はこっちを推しますね!
 んでもこっちを取ると遠回しに「竜児の“恋”は見間違えじゃないの?よくよく考えなおしてみたら?」と言っているってことなんですけどね!!

 というわけで、僕は奇跡に期待を懸けようと思います。原作と同じ展開じゃ詰まらないよ!!

川嶋亜美
 とことん貧乏くじ。

 ここで石田さんの記事を引用しちゃいますね。

このお話ではけっこう明瞭だけど、亜美さんは竜児に身体的なアプローチを小まめにかけてるのだよね。それで、竜児は気づいてなかったと思うけど、過去ストーカーにあった亜美さんがたとえいたずらであろうとそういう肉体的なあそびを心がけようと思うのは、やっぱりよほどのことであるって考えなきゃいけないじゃない。亜美さんはもちろんプールのときとかで大衆に向けてナルシシズムを満足させちゃうことがあるのはたしかだけど、対個人にアピールすることは実は皆無なのだよね。だから竜児はそうとう、自分で思ってる以上に亜美さんには好かれてた。

 気軽ないたずらではなく、“乙女の一大決心”があってのアプローチ、なんですよね。

 だから原作で竜児の方が半ばからかうように亜美に性的なアプローチを掛けると、非常に戸惑うし、それがやっぱり冗談だと分かると怒ってしまうこともあったりして。

 僕はこういった積極的な駆け引きを用いる恋愛劇が好きなのですが、残念ながら相手が悪かったなー、で済んじゃうのが、ま本作の残念なところであり、美味しいところでもあるのでしょう。

感想
 太陽だ、月だ、という喩え。

 これは難しいかな。

 僕は別にみのりんを太陽だとは思っていなくて、彼女がそのように演出しているだけに思えますね。「太陽に見える演出」を鵜呑みにしちゃっている竜児に、みのりんの方が面食らっちゃっているように見える。

 今までそれを鵜呑みにしてくれるのは大河だけだったようですし。

 他の人はみのりんのことを太陽ではなく、宇宙に輝く雑多な星星のひとつとしてしか見ていなかった、というのが僕の認識ですね。

 竜児とみのりんが仮に結ばれたとして、辛いのはむしろみのりんの方で、それは何故かというと、彼の傍にいるだけで「太陽を演じる」ことを強いられてしまうから。
 それは辛いよね、いつか潰れちゃうよね、と僕は思うな。

 だから、竜児がみのりんの傍にいることを願うなら、まず彼女の“光”を疑うことから始めるべきで、ま、それが出来ないのが彼の優しさでもあるんですが、自分に対する甘さでもあるかな。
 彼は自分の幻想をどこまでも肯定しちゃって、押し付けようとしちゃった、と僕は考えるから。

 亜美は何もかもが分かっていて、その上で「誰もが傷つかないようにうまくやろう」としていたのかな、とも思うんですが~。
 でも竜児の心性では、「彼女は太陽であなたが月よ」と言われたら、逆に「おお、彼女が俺を輝かせてくれるのか」とか火が点いちゃいそうだよね!!(んで、たぶんこれは結構その通りに作用していたのだと思います)

 で、でもでも僕はまだアニメに期待していますからね!!

参考リンク
【とらドラ! 第10話「花火」】(隠れ蓑~penseur~)
【とらドラ! 第10話「花火」】(バラックあにめ日記)