ef - a tale of memories.  第7話「I…」の感想文です

 テーマのひとつに“視点”があるのね。同じモノでも視点によって見え方がてんで違っている、と。群像劇というお題目を名目だけにはせずきちんと物語に活かせている作品は意外に少なめですが、はてさて。

ef - a tale of memories. - livedoor Blog 共通テーマ 麻生蓮治
 千尋の異常性に、彼女の抱える問題にようやく触れることの出来た蓮治くん。彼女は以前蓮治くんが言ったように決してぜんまい仕掛けのブリキ人形ではありませんが、それと同じように決して正常な人間でもない。

 連続性に欠ける。一貫性に欠ける。表情に欠ける。主体性に欠ける。つまり、“人間性”が欠けている。少しも持っていないわけではないけれども、絶対的に乏しい。

 蓮治くんは千尋に“お姫様”を求めていたというか。“自分がヒーローになれる状況”を求めて可哀想な、けれども可愛く見える千尋と接していたわけです。本当は千尋のことを見ていなかった。自分にとって都合のいい部分だけを見て、自分にとって都合のいい悩みを抱えていた。
これは以前に「雨が降ったから」と千尋との約束を破ったことでも、自分の家に彼女を連れていったことでも、図書館へ行ったことでも分かること。

 彼は千尋の事情のほとんどを省みていなかった。だからこそ「キスしてもいいか」と問えたり、「小説を書こう」とも言えた。彼の悩みは彼自身の問題で、彼の内面でしか解決できないことだからそれでいいのですが、千尋にその解決を求めたことの結果がこれ。火村さんのアドバイスがここでやっと彼の中で結実したことでしょう。
彼が彼女の事情をきちんと理解したのはAパートラストでしたが、しかして今回は本編中であの場面以外でも無自覚的に彼女の事情を理解した上で、彼女の障害を利用した狡い言葉を何度も吐いていましたね。それは千尋の危惧していたことで、彼女の信頼を裏切る言葉でもあるわけですが、それにも気付いて誠実に行動して欲しいところ。

 正直に言うと、こういう子が自分のエゴを自覚して悶える姿はまぬけづら的に大好物なのでもっとやれ!ただまあ、彼は発展途上なので物語中で「自分に甘いだけの男の子」からの脱却を図ってくれるとは思いますけどね~。


新藤千尋

 絵に男の子を書いても、自分以外の人間の存在を自覚しても寂しくはないと彼女は言いました。彼女の書く物語のエンディング案のひとつには「寂しさを自覚して壊れてしまう」というものもありましたが、はてさてどうなるのやら。
日記を書くことで島(=世界)を創造する彼女。日記に書くことで、その世界が広がる。書かなければその世界は広がらない。現実に存在したモノも存在しないし、起こった出来事も起こらない。

 彼女は神様を疎んでいるというよりは恐れるというか、神様に対してなんとはなしの不安感を抱えている。けれど、日記に頼らなくとも、自分のことを覚えていてくれる。世界を広げてくれる初めての存在が蓮治くん。
6話以前に出ていた彼女を縛る鎖はつまり日記の世界のことで、制限された世界のこと。

 さて、蓮治くんは何故千尋が自分を求めるのか、何故信頼してくれるのか、答えを出せるのでしょうか。

「自分がこれまで会っていたということは、今まで信頼していたということで」

と言いながらも、「キスをしてもいいですよ」と続けました。「キスしてもいいですよ」このやり取りがあるということは、“あのときのこと”を強く心に刻みつけていたということで、千尋は視聴者の目には思いっきり照れていましたし、確実性のない自分のこれまでと、自分の想いに戸惑っていたんですし、「おそらくはそうなのだろう。けれども違うかもしれない」との不安を押し殺して、一歩進んだ選択をしていた。

よくよく考えれば自明のこと。頑張れ女の子!


蓮治ママ

 ナイスアドバイス!何でもない常識的な恋のアドバイスのようで、息子の悩みを全てを見通したかのような発言でありました。それに淀む蓮治くんは「偶然にしろ図星を指されたな」と思ったのか「さすがは母さんだ」と思ったのかはまあ分かりませんがw

宮村みやこ

 色がなく、閉ざされた世界をふわふわ漂う彼女。ようやく羽を落ち着ける場所をやっと見付けられたと思ったのに……この有り様。
外面を取り繕うのが上手過ぎる彼女ですが、それだけに一度堤防が決壊して内面を曝け出してしまったら止まらない。自分で自分を受け止めるのはそろそろ限界か。

 自分を見て、自分の存在を認めてくれる相手を彼女は求めています。自分を存在させてくれる相手を。こんなこと言うとノエインみたいだよねなんて言っちゃ嫌。
本作の登場人物のうち若い子全員がそうなんですが、その欲求が今一番強く表面に出ているのは彼女と、あとは千尋なのかな。

新藤景
 景に関しては今期アニメ中途雑感で語った以上のことは言えません~。
普通の女の子過ぎる。

広野紘
 彼は彼で不器用なんだけども、作中の若い登場人物の中ではもっとも誠実なんですよね。そういう意味では期待してもいいんですが、景への対応は「甘え」なのかあるいは「誠実であるが故」なのかがまだ見えなくてw
 彼の不器用さ、人間関係における鈍感さは昔からのことで、それが分からないから、それを求めているから少女漫画を描いているのかもとも思うと「誠実であるが故」となるんでしょう。甘えであった方が、景にとってはいいことなんでしょうけどね。

 彼は自分の探している、自分には知覚出来ていないという色を見つけ出すことが出来るのか。まあみやみやと出会った夜を思えば容易に分かることではあるのですが。

■感想

 “記憶”から誰かを、何かを除外することでその“存在”を消す。弾く。この発想が思いっきりD.C.で視聴直後は昂奮が収まりませんでした。そして誰かと記憶を、想いを、視点を共有することで想いを繋ぎ合せようとする発想もあまりにもD.C.であるわけですよ!
なもんでウダウダと感想を書きあげるのが遅れてしまったわけですが、頑張っても結局大したこと書けてない\(^o^)/