D.C.Ⅱ S.S. 最終話「巡りくる季節」雑感

 枯れない桜が枯れてから二ヶ月が経ち、初音島にも春が訪れていた。
 咲き誇る島の桜を見て、「何かが欠けている」と意識する人々だったが……。

 精霊会議でしたごめんなさい!

 なんだろう、その、さくらさんと純一を生贄にして義之を一体召喚とかだと思えば、まー、分からないことはない。純一の扱いは悲し過ぎるけどね。

 ただ僕は、やはりどうかなって思うな。復活した義之の反応も、きな臭い。きな臭いんだ。僕には、櫻井義之は一度死んで蘇ったのではなく、義之2号が生まれ落ちただけに見える。

 いや、誰もが彼を櫻井義之だと認めれば(本人含む)、それはもう櫻井義之なのだ、ということは分かる。それはもう美夏編で示したことでもあるのだし。
 ただ、つまりは、そう。“それでもいい”と、誰かが言った上で義之を受け容れてあげる儀式が必要だったかな。僕にはそう感じられた。

 僕はこの作品に漂う盲目さが、寂しいと思った。悲しいと思った。今はただそれだけが、胸に残るかな。

【とりあえず、の真似事】(あにたむ亭)
 エスカフローネで触れている部分は厨二病的ヒロイズムについてであって、男の子のことではない気がします(笑)

 日本人は昔から判官贔屓の気がありますし、あるいは我が身を擲つことを美徳とする価値観が根付いている、と言えるかもですね。

・Σ(・ω・)

(σΧσ)<「チャべ兄は純粋な人なのだー。魂まで穢れた私らにはとてもまぶしいねー」

 や、精霊会議でごめんなさい的なソレであって、それ以上のものではないですよっ。

 あのような復活は、彼が喪われたその重さを考えると、僕には何か間違っている気がしないまでもない。学園長が失踪しても大丈夫なんかいというツッコミは野暮なので行いませんが、純一のスルーっぷりはやはり前作を蔑ろにしている感があります。

 前作で純一が行ったことは、言わば枯れない桜の代替。奇跡なんてなくとも、願いは叶う。真摯な想いの行き先は、枯れない桜ではなく、自分自身の手にしなければいけない。そういうメッセージの込められた前作が、貶められてしまったような、そんな気が。僕はするな。

【ダ・カーポ2雑感 音姫と由夢の、二つの対照】(隠れ蓑~penseur~)
 そもそも音姫が見ているのは、義之くんだったのかな。彼女の恋心は、どこを向いていたのかな。彼女の想いは、櫻井義之くんというひとりの男の子を認めていたのかな。

 僕にはそれが分からなくて、ゲームを遊んでも、アニメを観ても、分かりませんでした。我執が強いだけで、時折ふとひとりになると義之のことを考えるぐらいの余裕はあるのかないのか。大切な誰かのことを考えるというのは、その人が自分と一緒に過ごす時間だけに思いを馳せるということではないと思っていて。
 エゴは誰にでもあって、その強弱は本当のところ、外面からだけでは分かるものではない。けれども、現実の触れ合いとは違って物語でははっきりと見えてしまう。著者が読者に対して特別意地悪く振る舞ったりしない限り、彼ないし彼女の言動・行動を追っていけばいい。モノローグとかがあれば、更に明瞭だ。

 彼女の心が結局自分自身にしか向いていないと僕には見えて、それを思うと恋愛作品としては空虚なキャラクターを描いているのだろうな、と僕には思えてしまう。恋愛というのはつまり、他者との触れ合いであり、決して繋がらない線をどうにか交わらせようと努力するものであると、僕は思っているですよ。完全に交わることはなくて、登場人物たちが「あれ、今一瞬だけでも交わったかな?」という――誤解にしろ錯覚にしろ――そういう感覚を得ることが、そしてそれを読者が「うむ、真実である」と信じることが醍醐味だと思っている。
 音姫にはそれがなかったというか、そもそも心を交わらせようとする意思が、相手を理解しよう、受け容れようという気持ちがなかった、あるいは極端に薄かったように思えた。

 これは、義之の最期に対しての取り組みについてだけではなく、たとえば枯れない桜の成り立ちに興味がいっていなかったことであったり、(義之の出自が分かるまで)その恩恵について考えを巡らせようとしなかったことであったり、挙げればキリがなかったりします。彼女の心の在り様が恋愛を通して徐々に変わっていくような、そんな様が見えれば、僕は彼女が空虚だなんて、言わなかったことでしょう。

相手の孤独を分ってやれる。そんな考えは傲慢でしょう。やさしさとは、果してどう示せばいいものなのかしらね。はてさて、よ。

 こう言われると、辛いです(笑)

 確かに、正否で分けられる問題ではないでしょう。そして、彼女の振舞いが、行動が、無為だったとも言いません。彼女は何よりも自分の気持ちには誠実でありましたし、それに則った揺らがない姿は、ある種美しくもあったことでしょう。

 けれど僕は、彼女の視線から見える義之像というものが、見たかったかな。せめてそれだけでも、見たかったかな、と強く感じてしまったのです(´・ω・`)