『とらドラ7!』の感想文です

 パズルのピースを嵌め込んでいました。

 あるいは偽物の天使、偽物のサンタクロース回。それが本物かどうかではなく、労わる心がそこにあればそれでいいのだー、ということでして。


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とらドラ 7 (7) (電撃文庫 た 20-10)


登場人物

高須竜児
 今までも大河へ傾けている感情がどんなものであるか見詰め直す機会はあって、それを意識的に避けて来た節もある彼。
 しかし、今回ではそんな折々に訪れる“限定的な機会”ではなく終始そのような状態であったと言えるでしょう。それを亜美にきちんと言葉で糺された。……であるのに、また逃げてしまった。

 逃げてしまった癖に、彼はみのりんより大河を優先したわけですよ。
 もちろんそのみのりんはいつものみのりんではなく「いつ来るとも知れない」という言葉が前に置かれるわけで、どちらをより重視していた、と一概には言えないでしょう。とは言え真摯な自分自身への想い、そして誓いを破ってまで走り出してしまうほどの情熱を大河へ傾けていたのは間違いないのではないでしょうか。

 そんな彼だからこそ今回は敗北してしまっていました。このままなあなあのうちに大河とゴールインとか、そんなことは許されないでしょう。自分で自身へ向けて言った言葉こそ、彼は本当にしなければなりません。一時の迷いから出た想いではないことを、証明しなければならないのですよ!!
 曰く、壊れものは直せるし、バトンは渡されるべきなのですよ!

 逃げられたら、追い駆けないと。竹宮作品の男の子は走らなければならんのですyp!まずは、自分自身と向かい合って欲しいですねぇ。

逢坂大河
 4巻からここまで長かった。本当に長かった。6巻の彼女はどこか彼女らしくなくて、ようやくナマの彼女が本気で竜児と向かい合う、ということなのでしょう。や、そう言ってしまうのはいささか酷ですね。何と言っても彼女側は精一杯竜児から離れようとしたのに、彼の方から離してくれなかったんですから~。

 たとえばみのりんと竜児が結ばれてしまったとして、友達にはなれるでしょう。竜児のことだからやっぱり“普通の友人”以上には世話を焼いてくれることでしょう。でもそれでもはダメで、それでは足りなくて。そういったことを自覚した彼女が、次巻以降どう出るか、でしょうかねぇ。

櫛枝実乃梨
 実に卑怯。や、本作において一番卑怯なのは竜児じゃないかという意見もあるでしょうが、しかしてこれは比較の問題ではないんですよ!

 友達を思い遣っているという逃げ道を作って、それに縋った彼女。この辺、彼女だけの責任ではない。竜児の決意待ち、でしょうかね。

川嶋亜美
 可哀想だなぁ。彼女は一番素直だったのに、一番報われない。

 何だか某独の人というか、某三十路と同じ末路を辿りでそうであります……(´・ω・`)

 けれども、最近では「30歳」とか「独身」とかは“最高の女性”の別称らしいので、それもいいんじゃないかな!!

北村祐作
 いつも通りのイロモノ担当へ落ちぶれてしまった彼。僕としては彼が心を置いているのは会長だけであって欲しいので、スピンオフを待っています。いやまじでっ。

感想
 今回は登場人物の多くが心を震わせていまして、読み手の僕もそれに揺さ振られて脳内では喧喧囂囂の大騒ぎとなっていました。もうね、みんな幸せになって欲しいんですよ!!

 でも、どう転んでも“痛み”を伴う結末しか待っていないわけでして。それはしょうがないことなんですが、本作において喪失を抱えること、血反吐を吐きながらも倒れずにそれと付き合い続けることが成長だ、大人への道だ、と示されるわけではないことでしょう。
 30歳の出す答えとは如何に……?はてさて、続刊がますます楽しみになった巻でありました。


トラックバック送信先の皆様
【竹宮ゆゆこ「とらドラ7!」】(隠れ蓑~penseur~)
>>レストランのシーンは、まさに不自然なままごとをしているようというたとえがぴたりとはまるのかしらね。それはなんとも、残酷ね。
 このシーンで竜児は大河を傷つけないことにだけ考えが向いていて、彼女を包み込んであげることには思い至らなかった。
 これが彼なりの遠慮であるのはよく分かるんですが、クマのきぐるみを着て大河の下へ走った彼の心情がどのようなものであったかを考えると……結構、その、心が決まってしまったように思えてしまうんですよね。逡巡が、迷いが断ちきられてしまったかのような。

>>要するに自身の父親に対するルサンチマンから、自分自身はそういうふうにはありたくないと願い
 竜児が大河に求めているのは家族、であるんでしょう。彼は大河を助けることで自分が救われたがっている、というのは間違いない。
 けれども彼の想いはおそらく既にそれを逸脱している。僕にはどうもそう見えてしまうんですね。

>>実乃梨という人間が描かれるときこそが、とらドラという物語の要諦なのでしょうね。果して、どうなることかしら。
 それは竜児自身が誰でもない、自身の気持ちと真摯に向かい合ってから初めてなされるんでしょうね。
 本当に楽しみです。

【とらドラ7!】(いつも感想中)
>>大河、実乃梨、亜美・・・メインと呼べる3人の少女たちが想っているのは全員同じ。たった一人の・・・ちょっとお人好しでちょっと優しくて、ちょっと鈍い高校生なのですから・・・。
 僕はこの3人、想い方がそれぞれ違っているように思えるんですよね。大河はまんま家族を、実乃梨は恋人を、亜美は友人を欲しているように、僕には見える。

 一番切迫しているのは大河であるように思えるけれど、あそこまで怯える実乃梨を見ていると彼女にも何か傷があるように感じます。……ま、亜美は強い子なんで大丈夫でしょう。そう言う人はやっちゃん然り、三十路然りで貧乏くじを引いてしまうんですが、それは運命というか性分でしょうので仕方ないと思うんですよね♪

 話を戻しますと、だからこそ、それぞれで違った付き合い方があると思う。恋人の席はひとつだけしかないのだから、友人を大切に想ったり大事に扱ったりしてはいけないという道理はなくて。
 だから、問題は竜児がどのような気持ちで彼女たちを見ているのか、それを自覚した上で彼がどのような行動に出るのか、だと思うんですよねぇ。

>>ところで、作中のファミレスのシーンで冷や汗を流したのは私だけでしょうか!? あのなんとも言えない・・・気を使って、くっつけようとする謎の集団心理と、その狭間の駆け引き・・・。

 僕はあの場でいうところの能登的な立ち位置に覚えがありまして、そういう意味では僕も空気読めていなかったなー、という感じの冷汗はありましたね!
 でも、あのむずむず感。甘いだけでなく酸っぱさもあるでよ、という青春力も本作の醍醐味なのではないでしょうかっ。

>>実乃梨に恋する一方で、大河の一番の理解者でもある彼は、一体誰の事を一番大切に想っているのだろうか? 本編内で亜美に揶揄されるように、竜二と大河の関係は実に歪んでいる関係だったりする。
 大河風に言えば、彼が一番大切なのは自分なんでしょう。
 たとえば父親に裏切られる大河を見捨てられないのではなくて、父親に捨てられた“かもしれない”と心の底では疑っている自分を見捨てられないのが、彼でもあるんじゃないでしょうか。

 彼こそが救いを求めているように、僕には見えてしまいますので。

 ただ、亜美が竜児を父親的な気持ちで大河を見ていると評したのは、あるいは彼女なりの願いであったのかも分かりません。“その気持ちが恋ではないのなら”、彼女にもまだチャンスはあるから。そうであるなら仕切り直しも可能だろうから。

>>大河はこれからどうするのでしょう? 竜二を取り返しに行くのでしょうか? しかし最早事態は彼女一人が思い切ればいいという状況ではなくなってしまいました。

 彼女にとって、竜児と同じように実乃梨もまた同じく大事な存在であることは間違いないでしょう。“等しく”となると分かりませんが、それぞれ別個に違った方法で大切に想っていることは確か。

 僕は、その、なんというか。会長の件の焼き直しが見えるような気がします。
 木刀を持って殴りかかりにはいかないでしょうけど、やっぱり彼女は実乃梨に正々堂々ぶつかるよう要請するんじゃないかなと。それをするまでの葛藤を描くまでが、あるいは次巻となるのやも。

>>勇敢なようでいて臆病、優しさ故の残酷さ・・・彼女の天秤はいつも揺れ動いています。
 傷付けないのが優しさだというなら、彼女は“優しい”となるんでしょうねぇ。
 でも、僕には今回の彼女が逃げているように見えてしまった。もちろん、救いを求めて悲鳴を上げているようにも見えたのは確かなんですが、(この問題に関しては)彼女を救えるのは彼女自身しかいない。僕はそう思いますね……。

 また亜美に苦い役割を背負わせるのではなく、彼女自身がきちんと向き合ってくれるといいなぁ。

>>彼女は竜二を見限ったのでしょうか? それは現時点でははっきりと分かりません。
「もう助けてやるもんか」
 とは思ったことでしょうが、それは見限ったとはまた別の気持ちなんじゃないでしょうかね。次巻ではツンツンしていそうですが、竜児が亜美にきちんと向き合えば応えてくれるんじゃないかなと。

 いやはや、しかしhobo_kingさんはいつも筆が早くて羨ましい限りです!!!

【叫ぶ虎!壊れる竜!さらば平穏ようこそ激動! 『とらドラ!7』 感想】(まんざらでもない)
>>亜美はというと、「実乃梨と大河」という竜児にとって大きすぎる存在のせいで自分がだせず、最後まで竜児に特別な存在として見てもらえずに、語りかける声すらも届かない・・・・・・
 竜児が真っ直ぐに友人として接する女の子は(今のところは)亜美だけであることを考えると、彼は確かに彼女を特別扱いしているとも言えそうです。耳に囁き掛けるとか、かなり親密ですし。
 ただ、亜美が求めているのは“ソレ”ではなくて。

 一番“恋愛”出来そうな立ち位置にはいるんですけどね。大河相手と違って依存関係ではなく、実乃梨相手と違って色眼鏡で見ず、対等な関係。オイシイ位置ではあるはずなんですが……。

>>大河は自分の気持ちを清算し、実乃梨は自分らしい決断をし、竜児は死亡、亜美もつらい立場のままで今回は終了。

 実乃梨の決断は確かに彼女らしく、しかして“逃げ”であることが残念でありました。また、竜児の“死亡”も自業自得であるわけですし。ただ、これはもう一つ大きな波を作り出すための引き潮。
 竜児が中途半端な選択をしたからこそ、大河を振り切って実乃梨を待たなかったからこそ、得られるものもきっとあることでしょう。それはもちろん、「みのりんじゃなくて大河の心が手に入るよ♪」という意味ではなく!!